山と温泉で遊んでいる人のブログ
Switzerland

Switzerland Day 9 – Reached the summit !!

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ついにMatterhornに登る日が訪れ,ものにすることができた.
今夏で一番の快晴の中,往復6h 54minで無事に登り切れたことに満足の一言だ.

4:20 Hornli Hutte→6:09 Solvey Hutte→7:40 Summit(4,478m)→9:28 Solvey Hutte→11:14 Hornli Hutte (6h 54min)

3時30分頃にみんなモゾモゾし出した.トイレは混むと言われていたが,屋外のはがらがらだった.
我々の部屋(Zimmer 2)のメンツは起床が早すぎたのだろうか.

薄いパンと紅茶,チーズを食って朝食は終わり.あまりの行動食も食った.
ドアの前にガイド組が一斉に並ぶ.扉は4時20分きっかりからしか開かない
開門と同時に福袋バーゲンのごとく一斉スタート.

ガイド組は速い.あっという間にガイドレス組との差を広げ,
クーロワールに至る頃にはずっと下の方にヘッドランプの列ができている.
我々もコンテでnon-stop climbing.彼らは完全に道を知っている.
細かいところまで完璧に.そして最も合理的な道を.

初めはひたすらガレ場歩きだが,クーロワールあたりから岩となった.
まともなビレイは殆どしない.少し出た岩角にロープをかける程度.
だがそれでも十分だと思った.落ちる気はしなかった.
この程度の岩場が登れない人間は当然来ない.
もしいるとすれば,ガイドはすかさず降ろすに違いない.

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Solvey Hutteに来るとようやく空が明るんだ

1時間40分くらいでSolvey Hutteソルヴェイヒュッテの下まで来た.
ここからMoseley-Platte(モズレイスラブ)が始まる.
3級程度の超簡単なフェースだが,このスピードで登り続けるとやはりしんどい.
ガイドがソロで登り,“ブタのしっぽ”やハンガーに2回巻付けての簡単なビレイで私も登る.
それなりに疲労がたまってきたことが自分でわかる.
ガイドの登っているわずが数十秒の時間休めるので,何とか次に進めた.
Solvey Hutteでようやく初めての長休憩.到着が6時10分だから,小屋まで1時間50分.
休憩は5分ほどだったが,自分でもあまり休みたくはなかったので,十分な休憩だった.

小屋を過ぎて,肩の雪田に出る前にクランポンを装着
このあたりから山頂がはっきり見え,気合いが入る・・・が息が苦しい.
できるだけペースを一定にしようと努める.

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山頂からの美しい眺め

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イタリア側は行かなかった

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fixed ropeを掴んで登る箇所が続く.頂上直下は氷結している箇所もあった.
アックスなしでも不思議と岩を伝って登れる.当然ガイドもアックスを出さない.
そのまま登ってスイス側の頂上(4,478m)へ.頂上が見えてからは早かった.出発から3時間20分(am. 7:40).
十字架のあるイタリア側の山頂が間近に見えるが,稜線が狭いため通常ガイドは行かない.
これだけのスピードを出しての登山は初めてだ.そしてそのスピードについて行った自分に驚いた.
ガイドもめちゃくちゃいいペースだ,それにフォームもgreatだと言ってくれた(ありがたい話だ).

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頂上に10分ほどいたが(!),その後早速下山する.一応形はコンテなので,当然私を先に降ろす.
しかし滑ったらおそらくガイドも止められないだろう.
少しバランスを崩したら強引に引っ張って修正するが,数十kgの力で一気に引っ張られたら,ガイドもろとも何百メートルと落ちていくだろう.

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fixed ropeが有ろうが無かろうが,climb downしてくるガイド

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ぶたのしっぽ

傾斜が急なところは,私を先にlowering offさせて,ガイドはフリーソロで降りてくる.
ビレイは,例によってアンカーや”ブタのしっぽ”にムンターヒッチか単に2重に巻くだけ.
下からクライマーが登ってきても,”Go!”Go!”とガンガン私を行かせる.
他者に遠慮しない.自分の安全を最優先で確保する

テラスに降りたら,アンカーに2回巻いて待っておけという.
彼は軽やかに,しかも颯爽と降りてくる.やはり相当なスタミナとクライミング力だと思った.
これが国家資格を持ったプロのガイドか!

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先日降った雪が随所に残っている

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降りる方が登るよりも難しかった

アンカーの数は少なく,ビレイ点くらいだが,そのアンカーが至る所に散らばっている.
迷えるクライマーのラッペル用もある!加えてガイドがクライムダウンする際に,クイックドローを我々にかけさせてロープの流れをよくするためのアンカーもあった.
つまりアンカーを追うだけの登りでは100%間違ってしまう.難しい山だ.

Solvey Hutte手前でクランポンを外した.
頂上から取り付きまでずっと一緒にガイド組1パーティがいた.
彼らのうち一人は,日本で有名な(?)ガイドMr.Ivonだった!(ネットでたびたびその名を目にした).
そしてもう一方は,驚異のオーストラリア人
確実に50後半以上の,相当腹の出たオッサンであるが,その脚力とスタミナは尋常ではなかった!クライミングも鮮やかなのだ!!

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彼らがMr.Ivonとオーストラリア人だ

Solvey Hutteは最近ビバークする者が多くて,かなり小便臭い.改装してかららしい.
日本人はすぐビバークしたがるので,外国人からの評判が悪いと聞く.
5分ほど小休憩してから,また一気に下っていく.
だんだんlowering offも少なくなり,ひたすらクライムダウンすることが多くなってきた.
落ちたら,何処までも落ちていくだろう.疲労で足取りが悪くなってくると,
すぐ前を行くMr.Ivonが,”Kosuke! Gamba! Gamba!!”と声をかけてくる.
相当,日本人相手に岩やってるな・・・って感じだった.

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View from the foot of the Matterhorn

帰りは,行きに見上げながら通過した(暗かったが)ピナクルの頂上を通って下山した.
上はちゃんと平坦なスペースがあって,そこで四人休憩した.気象観測機らしきものもあった.

さっきからHornli Hutteが下の方に見えているのに,全く近づかない.
やはり下山が長いって事前に言われていただけのことはある.
最後に取り付きの太いfixed ropeを伝って降りたら下山完了.
a.m. 11:14だったので,total 6h 54minで帰ってこられた.

登りより圧倒的に下山が難しい!!

目標はSolvey Hutteまで2時間,午前中の下山としていたので,大いに満足できた.そしてなにより怪我がなかったこと.
“Do you believe we are the 1st and 2nd?”とガイドが言う.
まさかとは思ったが,そのようだった.
ガイドは私の力を十分に見切って,それを引き出したようだ.流石だとまた感激した.

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下山後Hornli HutteでYさんに会う.どうやらYさんは途中でリタイアされたよう.
Hさんは昨日小屋で出会った男性らに託され,登っていったとのこと.
一度登頂しているYさんにとっては,2度目のmotivationはやはり低かったらしい.
「1回登ったらもう登る気がしない山」と仰っていたが,その通りのような気がした.
ある方のHPでは,Matterhornのことを「欧州富士」と記述されていたが,的を得ている言葉だ.
一度は登らないと気が済まない山,でも一度登ってしまうともう登る気がおきない山.
あまりに危険すぎる.下山で落ちたら,100%死ぬ.滑っても,岩が欠けても同じ結果.
これだけリスクのある山を,初登でもないのに無駄にリスクを負って行く意味は無いと思い,
Yさんと相談してスイスガイドとの登攀を選択したが,正解だったとお互い思った.
スイスガイドは,トレーニングを積み,国家試験を合格した者達.最高の名誉職らしい.
誰でもガイドと名乗れる日本とは違い,質の高さは保証されている.今回それを直に体感した.
フランスとか日本など他国の出稼ぎガイドでは,間違うことも結構あるらしい.

3時頃,私一人がZermattに向けて下山した.YさんはHさんらのパーティを待った.
ヘリが飛んでくると,もしかしたら,と何度も思ったらしい.
Hornli Hutteのマスターはレスキュー隊のボスでもあるが,彼が”Everyday, accidents!”と言っていた.
リスクを冒して自己責任で入っているのだから,下山が遅くなろうとも構ってられない.
だが,要請があれば飛んでいく,とのこと.当然の話だが,やはりヨーロッパだなあと感心した.この考えはしっくりくる.

テン場は駅のすぐ側で,シャワーもあり十分だった.
余りのご飯とカレー,COOPで買ったソーセージを食って寝た.
本当に疲れた一日だった.

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