山と温泉で遊んでいる人のブログ
Trivia

高山病

ふと手に取った6月13日付のNEJMに急性高山病についての記事[1]が載っていた.
今後の役に立つ,かもしれないと淡い期待を抱いて,簡単に書き留めておこう.

[1] Bärtsch, Peter, and Erik R. Swenson. "Acute High-Altitude Illnesses." New England Journal of Medicine 368.24 (2013): 2294-2302.

低酸素下でのathletic trainingは発症率を有意に下げるとのエビデンスはない.
だけど普段からの持久力トレはしましょう.
発症しやすさを予想する信頼に足るテストはない.

<症状など>
Acute Mountain Sickness
: headacheが主要症状, anorexia, nausea, dizziness, malaise, sleep disturbance
一般に2500m以上登ると6~12時間以内に生じる.
通常は1~2日で改善.

High-Altitude Cerebral Edema
: truncal ataxia, decreased consciousness, and usually mild fever
治療しないと脳ヘルニアで逝っちゃう.
NSAIDsに反応しにくい頭痛や嘔吐vomitingで疑う
頭痛等の症状を認めなくても脳浮腫は否定できない!
4000-5000mでは0.5-1.0%で発症すると推定.

High-Altitude Pulmonary Edema
: loss of stamina, dyspnea, and dry cough with exertion, followed by dyspnea at rest, rales, cyanosis, cough, and pink, frothy sputum
放置すると50%が逝っちゃう
4500mを4日,1日かけて登る→発症率2%,6%.急ぐとリスクも上昇
既往あると再発リスクも高くなる
低酸素状態での肺動脈圧測定はリスク評価にはお薦めできない.

<Risk Assessment>
LOW:既往なしで≦500 m/day above 2500 m,高度順応済みでrapid ascent
MODERATE:既往不明でfast ascent (>500 m/day above 3000 m) etc.
HIGH: 既往不明で>500 m/dayで高度4000m以上,同程度の高度で既往あり

<予防prevention>
直近まで2000-3000mに1週間はいて,より高い場所でトレッキングやクライミング.
順応acclimatizationにはどれくらいの時間が必要かはわからん!
2500m以上ならゆっくり登れ(300-500m/day)

<予防投与Prophylactic Medication>
・頭痛
acetaminophen 320mg x 3/day, q3hを登る1時間前から.
ibuprofen 600mg x 3/day, 登る数時間前から
普通は1,2日で次第によくなる.

・頭痛・脳浮腫
acetazolamide
  :中等度リスク125mg x 2/day
 :高リスク 250mg x 2-3/day
side effects→末端知覚異常acral paresthesias(35 to 90%), 多尿polyuria(8 to 55%)
副作用は事前に飲んでチェックしておこう!

contraindicationあれば・・・
dexamethasone 4 mg x 2-3/day
糖尿病,腎機能障害,精神病・・いやなので気をつけよう.

・肺水腫
nifedipine in a slowrelease formulation 30mg x 2/day
我らがアダラートCR®が1st choice.
tadalafil (シアリス®) 10mg x 2/day
dexamethasone 8mg x 2/day

inhaled salmeterol 125μg x 2/day: 3rd choiceで上記よりも効果は薄いもよう
ステロイド入りのアドエア®とかはどうなのか?タキり出したら嫌ですなあ.

注意:diuretics利尿薬は効かないよ!

<治療>
・頭痛
症状軽ければレストしましょう.500-1000m高度を下げましょう.
NSAIDや制吐薬,acetazolamideを飲みましょう.
酷けりゃDEX 8mg IM /IV/p.o. 後,4mg q6hでメンテナンス
ヤバけりゃO2投与(2-4L)して下りましょう.ASAP!!

・脳浮腫
はやく下りろ!O2投与(2-4L) or 降りるまでhyperbaric bag高圧バッグ
DEX 8mg IM /IV/p.o. 後,4mg q6hでメンテナンス

・肺水腫
はやく下りろ!O2投与(2-4L) or hyperbaric bag
nifedipineの徐放薬を60-80mg

<参考>
・International Society for Mountain Medicine
http://www.ismmed.org/
・Medex – Medical Expeditions
http://www.medex.org.uk/
この辺見ておけ,とのお通達.

内服量は例によって外国人スケールだから,日本人は調整が要るかもね.
結局,高山病は完全には防げないし,発症を予測も十分にはできないってこと.
1日以上症状が遷延したら,降りるのが賢明だな.

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