岳人2007年4月号の特集を見てその存在を知った.
どうやら7P目の洞穴横のクラックがCRUXのようだ.しかも濡れているらしい.そのために敗退したという話を聞いたこともある.とにかく前日からの心配はそこだけだった.
今回は最終ピッチで敗退という結果に終わったが,今までに身につけてきた技術を全て出し切ってのクライミングができたことには満足している.そしてさらにレベルアップする必要性にぶつかり,課題を目の当たりにしたという意味では意義深い山行になった.
【登攀時間】
開始7:50~7P目洞穴手前11:00~テン場14:35

1P目 フォロー
北沢大滝の横のフェイス(5.6)を登った.カムがほとんどで,なぜか離れた場所にステンレスボルトが打ってあった.どう見ても使わない.終了点はさびさびハーケンだった.まるで沢登りのような雰囲気がして楽しめた.
2P目 リード
私がリード.出だしにステンレスボルトが打ってあった.ここもまた楽しいクライミングができた.1P目よりも簡単な気がしたが,こちらは5.7らしい.終了点はなく,といって木やクラックもなく,岩にスリングをまいて作った.もう少し観察すればほかに見つかったかも知れない.

3P目 フォロー
5.4といったいどの程度難しいのか分からないグレードだ.右の方は完全に滝になっている.左の方のガレ場から詰めた.ピッチは適当に区切って木でビレイ.私はフォローで登った.トポに書いてあるクラックは全く見あたらず,意味が分からなかったのが心に残っている.

4P目 リード
5.6のピッチで私がリード.右に大岩壁を見ながらのクライミング.カムを噛まし木で支点を作った.ザイルを目一杯出し,適当にピッチを区切った.終了点は全くなく,カムと岩角でハンギングビレイ.カムでビレイしたのは初めてだった.

5P目 フォロー
こちらも5.4のピッチ.「八ヶ岳のようなスラブ」と書かれてある.確かにスラブといわれればスラブだ.「八ヶ岳のような」の意味は経験がなく分からないが,快適にフォローで登った.

6P目 リード
Ⅱ級とあるがこれは藪漕ぎだ.笹をかき分けながら登り最後に若干岩場が出てくる程度.良さそうな木があったのでそこでビレイ.

ここで休憩.左へとトラバースしていくと本峰フェースが顔を現してきた.実はこのトラバース,結構いやらしく,足は滑るわ,ホール ドは欠けそう.しかも落ちたら再起不能になるような高度でかなりヒヤヒヤものだった.

そこからフェースをノーザイルで登り(これだけでもルートになる),例の洞穴が見えてきた.案の定水がしたたっている,というよりも流れていた.暫くクラックを眺めているが,挫折感でいっぱいになる.
下部は大丈夫だろうが,上部のクラックは全く自信がない.経験からいってそりゃそうだ.あの高さでカムを噛ましつつ,しかも濡れている恐れのあるクラック(5.8)を登るスキルはまだ無い.共に挫折してしまい,結局敗退しようという結論に至った.

烏帽子岩の右肩に向けて藪漕ぎをして戻った.ちょっと登りすぎて時間をロスしてしまったが,西肩に出られた.烏帽子岩裏にはまだまだ岩場があり,錫杖岳のスケールの大きさを目の当たりにした.

道はルンゼのようにすごい傾斜で下るのに一苦労だった.途中で道を間違えたのか,正規の道らしい道に合流した.そこから少し下ると登山道に出て,そのままテン場に戻った.